2073-2077

2073、
奥義抄(清輔)(歌学大系)
萬葉集所名、抜き出しても煩雑なので、注意したいものだけ指摘する。
山。たくさんある。「の」のあるのとないのとがあるときは、ある方を出しているようだ。
峰。あをねがみね。ゆづきがたけ。いこまがたけ。最後のは万葉集にないようだが。
坂。ほとんど「の」が付いている。ないのは、やそすみさか、かみのみさか。
岡。ほとんど「の」が付いている。ないのは、しげをか。
杜(もり)。全部「の」が付いている。
野。あるのとないのと混在。
原。あるのとないのと混在。
海。全部「の」が付いている。
江。特になし。
津。略。
浦。ほとんど「の」が付いている。ないのは、しほつすがうら。
濱。ほとんど「の」が付いている。ないのは、おほわたりはま、きくのたかはま。
潟。特になし。
島。「の」のない方が多い。
崎。みわがさき。みほがさき。のこりは全部「の」がつく。
河。「の」のない方が多い。
池。全部「の」が付いている。
井。略。
橋。略。
里。略。
雜。特になし。
以上、だいたい私が調べてきたのと同じ。よく調べてあるが、それだけではたいして意味がないとは言える。
2074、
和歌初学抄、清輔(歌学大系第2巻)
所名。(平安以降のを出しているようだ)
山。
大方「の」なしで、あるのは、あらしの山、おとぎゝの山、みわの山、たかまの山、ふじの山、はこねの山、いぶきの山、あをばの山、あらちの山、ながらの山、とこの山、ひらの山、うらこの山、あひづの山、いなばの山。
岡。半々。
原。松原ばかり。
野。全部「の」無し。
杜(もり)。全部「の」有り。
關。略。ただし全部「の」有り。
牧。略。ただし全部「の」有り。
瀧。「の」無しは、なるたき、だけ。
河。全部「の」無し。
2075、
池。全部「の」有り。
江。すみの江以外全部「の」無し。
沼。全部「の」有り。ただし3例。
渡。略。ただし全部「の」有り。
海。全部「の」有り。
浦。全部「の」有り。
濱。うどはま以外全部「の」有り。
崎。半々。いらごがさき、あり。
島。混在。無い方が多い。
橋。だいたい有る。無いのは宇ぢばし、やつ橋。
以下、郷、井、神、雜は略。なお、よしの山の注の中でアヲネガミネニアリとあった。
2076、萬葉集所名。奥義抄にも同じ項目があり大同小異。
和歌色葉、上覺(歌学大系第3巻)
國々の中の所々の名
山。初學抄のとほぼ同じ。
岡。同上。ならびのをか、など。
原。同上。
以下略。萬葉集所名。同上。 久曾神氏の解題でも初学抄に負うことを指摘。
2077、井蛙抄、頓阿(歌学大系第5巻)、同名々所、として59頁~89頁にわたって書いている。同名といいながら「の」の有無を無視したり「が」の付くのをいれたり、途中で切断したりしていて、地名としての認識が不十分。
初學一葉、三條西實枝(歌学大系第6巻)、關路早春、逢坂、不破、鈴鹿、關の藤川、足柄、霞の關、白川の關、とある。順番から言うと、この霞の關、は、今の霞が関と関係があるのだろうか。コトバンクでは、かつて奥州街道の関所があったからというが、「霞の関」とは言っていない。ネットではほかにも、霞の関、という呼称も中世からあって有名だったらしいが、いまの霞が関と同じか説が分かれるとか、鎌倉街道の別の地点にも、霞の関、があったようだ、とかも言う。実に錯綜しているが、要するに、古くは、霞の関、で、今は、霞が関、というように、の→が、の変化があったようだ。双びの岡→双びが岡、と同じ現象か。