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巻2のノ表記地名。
鹿乃浦(121)、丹生乃河(130)、石見乃海(131)、石見之海(135、138、139)、辛乃埼(135)、渡乃山(135)、屋上乃山(135)、淡海乃海(153)、清御原乃宮(162)、伊勢能國(162、163)、浄之宮(167)、真弓乃岡(167)、檀乃岡(174)、明日香乃河(194、196)、木〓之宮(196)、真神之原(199)、吾妻乃國(199)、百濟之原(199)、香来山之宮(199)、埴安乃池(201)、猪養乃岡(203)、畝火乃山(207)、羽易乃山(207)、引手乃山(212)、狭岑之嶋(220)作美乃山(221)
巻1は、ノ無表記が7例、ノ表記が26例
巻2は、ノ無表記が14例、ノ表記が30例
全体に巻2の方が多いのは(33→44)、長歌が多いからだろう。無表記(読み添え)が倍になったが、表記は4例増えただけで、そんなに変わらない。これは「ノ」を付けない地名まで調べないと何とも言えない。言うまでもないが、原、池、河、山、岡、島などがついた複合名詞の場合、ノが付きやすい。こういうことは依然調べたときにすでに言った。何故同じことをやっているか。それは「耳我嶺」は「ノ」を読み添えにするのかしないのかの傾向を知りたいからである。
巻2の地形名等で、ノがつかないもの。
芳野河(119)、高角山(132、134)、室上山(135一云)、神山《みわやま》(157)、神岳《かみをか》(159)、二上山(165)、明日香河(196)、明日香川(197、198)、10例。
巻1の地形名等で、ノがつかないもの。
高山(13、14)、青香具山(52)、野嶋(12)、子嶋(12或云)、耳梨山(14)、伊奈美國波良(14)、三輪山(18)、平山(29)、芳野川(38)、田上山(50)、氏河(50)、巨勢山(54)、亦打山(55)、引馬野(57)、宇治間山(75)、佐保川(79)、立田山(83)、高野原(84)、19例。
巻2の方がほぼ半分になっている。この落差は何か。よくわからない。共通するのが、芳野川(河)(38、119)、三輪(神)山(18、157)。この二つはノが付く形もある。ノがない方が固有名詞としての完成度(記号化)が高いから、この川と山は非常によく知られた地名なのだろう。そのほか、明日香川、神岳、二上山、香具山、耳成山、奈良山、巨勢山、立田山、佐保川、亦打山、氏河、などは、神岳以外は、今もほぼ確実に比定出来る地名だ(広狭、読み方、表記などは一致しないことが多い)。これらの中では、明日香川、奈良山、立田山、佐保川、亦打山、は、ノのつくのもあるが、神岳、二上山、香具山、耳成山、巨勢山、宇治川はノの付くのがない。有名だからといって必ずしも、付くのと付かないのとの両形が有るわけではないということは、ただの音数の関係なのか、付くのと付かないのとで、歌の意味に差があるのか、一首一首確認しないと分からない。
そのほかの、ノがつかないもの。
巻1
野嶋(12)、子嶋(12或云)、伊奈美國波良(14)、田上山(50)、引馬野(57)、宇治間山(75)、高野原(84)、19例。
巻2
高角山(132、134)、室上山(135一云)、
これらは、だいたい比定できるものだが、野嶋(子嶋)、宇治間山、高角山(室上山)は大体の所在は分かるものの、具体的に比定するのは困難だ。ノがつかないから、固有名詞としての完成度は高いはずなのだが。野嶋や高角山は、イメージとして歌の表現に関わりがあるようだが、宇治間山などは、具体的な山の位置も形も分からず、地名としての表現効果も不明で、なぜこういう地名が詠まれるのか全く謎である。