2263

2263、
万葉集の地名の様態(題詞左注等は除く)
巻1、天乃香具山(2)、天之香来山(28)、高山(13、14)、青香具山(52)
   八間跡能國(2)、倭(29、35、64、70、71、73)、日本(44、52、63)
   内(4)
   網能浦(5)
   兎道(7)
   熟田津(8)
   岩代(10)
   野嶋(12)
   阿胡根能浦(12)
   子嶋(12或云)
 雲根火(13)、畝火之山(29)、畝火(52)
   耳梨(13)、耳梨山(14)、耳為(52)
   伊奈美國波良(14)
   三輪乃山(17)、三輪山(18)
   奈良能山(17)、平山(29)
   楢(79)
   寧樂(80)
   綜麻形?(19)
   射等籠荷四間(23)、伊良虞能嶋(24)、五十等兒乃嶋(42)
   吉野(25、74)、芳野(26、27)、
   吉野乃國(36)
   吉野乃河(37)、芳野川(38)
   耳我(ノ)嶺(25)、耳我(ノ)山(26)
   吉野乃山(52)
   橿原(29)
   淡海(ノ)國(29)、淡海乃國(50)
   樂浪(29、30、32、33)、左散難弥(31)
   大津(ノ)宮(29)
   思賀乃辛碕(30)
   志我(31)
   比良(31一云)
   木路(35)
   勢能山(35)
   秋津(36)   
   嗚呼見乃浦(40)
   手節乃埼(41)
   隠乃山(43)
   隠(60)
   去来見乃山(44)
   泊瀬(ノ)山(45)
   泊瀬乃川(79)
   阿騎(45、46)
   藤原(50、53)
   田上山(50)
   氏河(50)
   巨勢道(50)
   巨勢山(54)
   許湍(54)、巨勢(56)
   泉乃河(50)
   藤井我原(52)
   埴安(52)
引馬野(57)
   安礼乃埼(58)
   圓方(61)
   對馬(62)
   大伴(63、66、68)
   住(ノ)吉(65)
   高師能濱(66)
   象乃中山(70)
   宇治間山(75)
   明日香(78)
   佐保川(79)
   山(ノ)邊(81)
   立田山(83)
   高野原(84)
巻1から地名を抜き出した。地名を含むが語として地理的な意味を持たないもの(明日香風(51)、樹人(55)、伊勢處女(81)、安良礼松原(95))は省いた。御津(63)、美津(68)は普通名詞と見なして省いた。大津(ノ)宮(29)は宮号だが、地理的な意味をもつと見なした。綜麻形?(19)は地名説があるがはっきりしないので?を付けた。(ノ)は塙版で読み添えているものである。延べ101例で非常に多いと感じる。異なり語数でも65例ある。巻1は全部で84首だから、長い長歌なども複数あるとは言いながら、たしかに地名が多い。といっても、地名のないのは、1(長)、3(長)、6、9?、11、15、16、19、20、21、22、34、39、47、48、49、51、59、67、69、72、76、77、82で、24首もあり決して少なくはない。1、3を除く長歌に地名がたくさん出るということも影響しているのだろう。
古今集、始めは長歌が出てこないので、100番まで調べた。
よしのの山(3)、かすがの(17、18、22)、くらぶ山(39)、み吉野(60)、なら(90)、みわ山(94)
以上、8例。季節の歌ばかりだから、比較するなら、万葉の巻十あたりとするべきだが、それにしても、101例に対して8例、一割もない。しかも歌枕ばかり。
新古今集
みよしの(1、70、100)、あまのかぐ山(2)、もろこし(5)、あはぢしま山(6)、かすがの(10、12、13、78)、しが(16)、あふさかの山(18)、かたをか(19)、まきもく(20)、かすが(22)、みしまえ(26)、なにはえ(26)、きよたき河(27)、ふじ(33)、むろのやしま(34)、なごのうみ(35)、みなせがは(36)、すゑの松山(37)、なにはがた(57)、たのむ(58、61)、むつた(72)、かづらき山(74)、よしの山(79、86、92)、たつたの山(85、90)、かづらき(87)、たかま(87)、たつた(87)、いその神(88、96)、たつた山(91)、をぐらのみね(91)、よしのゝ宮(97)、
以上、41例。歌枕ばかりとは言いながら、古今集よりもはるかに多い。5倍だ。それでも万葉集の半分以下。
万葉集は平安以降の和歌集に比べて非常に地名が多いのは、たいがいの人が知っていることで特に珍しいことでもない。とはいうもののやはり、3つの代表的な歌集の個性が出ている。万葉はまだまだ叙情性が突出してはいない。具体的な事実を好んだのであろう。