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如は、ほぼ「ごと」と読んでいるが、新大系、新全集、全集、大系、といった最近の有力な注釈書で「ごとく」とよんでいる。用例を見ると、
25、時無如(ときなきがごと) 間無如《まなきがごと》 26、不時如《ときじきがごと》 無間如《まなきがごと》 84、今毛見如(いまもみるごと) 129、多和良波乃如《たわらはのごと》 199、天之如《あめのごと》 207、晩去之如《くれぬるがごと》 雲隱如(くもがくるごと) 213、枝刺有如(えださせるごと) 534、今裳見如(いまもみるごと) 538、心在如(こころあるごと) 649、言下有如(ことしもあるごと) 1379、故霜有如(ゆゑしもあるごと) 1753、家如(いへのごと) 1807、入火之如(ひにいるがごと) 1933、彼毛知如(それもしるごと) 1973、今咲有如(いまさけるごと) 2351、草如(くさのごと) 2352、玉如(たまのごと) 3000、鹿猪田禁如(ししだもるごと) 3178、雲之行如(くものゆくごと) 3260、無間之如(まなきがごと) 不時之如(ときじきがごと) 3278、吾徃如(わがゆくがごと) 十六待如(ししまつがごと) 3293、無間如(まなきがごと) 不時如(ときじきがごと) 4264、床座如(とこにをるごと)
となっていて、「ごと」は29例で相当多い。出さなかったが、漢文風に「如~」で「~ごと」と読むのもある。
一方「ごとく」の方は、
213、茂如(しげきがごとく) 328、薫如(にほふがごとく) 351、跡無如(あとなきごとし) 470、如千歳(ちとせのごとく) 608、 額衝如(ぬかづくごとし) 632、 楓如(かえでのごとき)755、截燒如(たちやくごとし) 892、云之如(いへるがごとく) 933、遠我如(とほきがごとく) 長我如(ながきがごとく) 1269、三名沫如(みなわのごとし) 1367、此待鳥如(とりまつごとく) 1984、生布如(おひしくごとし) 2666、月待如(つきまつごとし) 2769、生及如(おひしくごとし) 3246、月日如(つきひのごとく) 4214、消去之如(けぬるがごとく)
で、助動詞の活用語尾のような部分に変化があって、「ごとし」「ごとき」もあるが、「ごとく」は9例、「ごと」の29例に比べると非常に少ない。それでも、「ごと」としか読めないというほどではない。新大系、新全集、全集、大系は、おそらく「まなきがごと」では字足らずなので、「まなきがごとく」と読み、7音にしたのだろう。新大系などは、できるだけ字余り字足らずをなくそうという方針があるらしい(佐竹昭広氏の影響か)。「ごと」というのは、副詞か、助動詞の語幹か、どちらかだが、いまそこまで調べる余裕はない。それに注釈書などは、そういう品詞の説明などはほとんどやらない。
なお、「如」の読みを示すための送りがな(活用語尾)のような表記をつけるものがある。
168、天見如久 196、川藻之如久 靡如久 210、茂之如久 239、天見如久 309、相見如之 466、消去之如久 477、散去如寸 3272、客宿之如久 3791、爲輕如來 3835、鬚無如之 4214、失去如久
「ごとく」「ごとし」「ごとき」である。例は少ないが、これなら「ごと」とは読めない。
なお、「ごと」にしろ「ごとく」にしろ、字足らずは「まなきがごと」だけで、他はすべて5音7音に統一されている。字足らずはよほどの根拠がない限り認めないというのなら、新大系、新全集、全集、大系のように「まなきがごとく」がいいとなる。しかし9例と29例では圧倒的だというなら、「ごと」でいいとなる。要するに決め手がないのだ。それにしても、全集と新全集、大系と新大系は新旧の差が小さい。著者は違うのに。