1906、3237
口訳、奈良の山を過つて、宇治川を渡つて…
全釈、(緑丹青)奈良山ヲ過ギテ、(物部之)宇治川ヲ…
齋藤総釈、奈良山を過ぎて…
全註釈、美しい奈良山を通り、…
窪田評釈、あおによし奈良山を過ぎて、…
佐佐木評釈、奈良山を過ぎて、…
私注、アヲニヨシ(枕詞)奈良山を通りすぎ、…
大系、奈良山を過ぎて…
注釈、奈良山を過ぎて…
全集、(あをによし) 奈良山をあとにして
明治以後の注釈を見ていくと、ほぼすべて、直訳式に「過ぎて」と訳しているのに、昨日も見たように、全集になって、突然「あとにして」と訳すのは異様だ。「あとにして」でも、「過ぎて」の意味にならないことはないが、やはりそこから出立するという意味がつきまとう。住むか何かしてなじんできたところを振り捨てて、別れて、という意味になるだろうから、「過ぎる」とは違う。「故郷を後にして」「祖国を後にして」「学舎を後にして」とか。