2258

2258、
準不足音句考、木下正俊、「萬葉」第26号、1958年1月
山口佳紀氏が言及されていた(2250参照)ので読んでみた。もう63年も以前のものというだけでもないだろうが、何とも素朴な論文で、それに木下氏という人もナイーブな人だからほほえましくなる。関東とは違う関西の特徴だろうか。とにかく、山口氏の簡単な紹介で尽きている。準不足音句は第二句と第四句に圧倒的に多い。つまり7音句に多いわけだが、これについては山口氏が解決を与えていたように思う。残る一、三、五句には少ないが、一、三句については(つまり5音句)、準不足音句にしないような改訓はほとんどできそうにない。それで第七句(7音句)の81例の改訓を試みてみた。というので、81首の短歌を全部引用してすべての改訓の可能性を試してみると、半数以上の45句は確実に改訓できるとしたものだ。
関西風という意味で、最近出た(昨年の4月)坂本信幸氏の「万葉歌解」を連想させる。ただし、この本はちょっとひどい誤植が散見する。954頁の大著なら仕方がないか(しかし、2万7千円もする、塙書房の本なのだが)なら仕方がないか。それにしても、渡辺護氏が渡辺譲氏になっていたのには驚いた。ほかには、吉野→古野、熊凝→熊擬、弓弭→弓餌など。読み切ってないからまだまだ出て来るかも知れない。