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笠金村・高橋虫麻呂田辺福麻呂 人と作品、中西進編、おうふう、268頁、2800円、2005.9.25
笠金村と女性仮託――「娘子に誂へられて作る歌」(巻四・五四三~五歌)を中心に―― 井ノ口史
金村の紀伊行幸歌の女性仮託は虚構だという。留守宅の女性を描いて行幸官人の男達を楽しませたのだろうという。その虚構の女性に金村は感情移入することはなく、あくまでも男から見た女性でしかなかった。それが金村の限界だろうという。それにしても、ここでは旅を楽しむ雰囲気が強い。敦賀湾での望郷の歌も、それほど深刻なものではなく、美景を何倍も楽しむためには、家族同伴がいいのだがといった程度だろう。それにしても、井村氏の言われるように(赤ら小船)、越路望郷の長短歌は、「すべなし」以外にも、分かりにくいところがあり、主題がつかみにくい。金村は実際の感情だけでなく、虚構をまじえてくるところがある。