2007、2008
整理。
「~の~」
「の」を表記するもの。
比婆之山、宇迦能山、伊那佐能夜麻、伊服岐能山、幣具理能夜麻、波佐能夜麻、波都世能夜麻、金※[金+且]岡、波都勢能賀波、玖須婆之河、余佐美能伊氣、氣多之前、甜白檮之前(アマカシノサキ)、袁都能佐岐、※[言+可]和羅之前、由良能斗、阿比泥能波麻、阿遲摩佐能志摩
山7、岡1,川2、池1、埼4、門1,浜1,島1。一字一音式は明瞭でよい。山や海関係に多いのは万葉と同じだが、なぜか「埼」が多い。
「の」の読み添え。
日枝山、高千穂山、熊野山、衝田岡、玉手岡、喪伏岡、石坏岡、肥河、劔池、酒折池、血沼池、狹山池、高津池、市師池、輕池、鷺巣池、坂手池、百濟池、丸邇池、氣多前、尾津前、※[言+可]和羅前、狹別嶋、二名嶋、三子嶋、筑紫嶋、伊伎嶋、佐渡嶋、知※[言+可]嶋、兩兒嶋、淤岐嶋、阿遲摩佐能志摩、速吸門、淡水門
山3,岡4、川1、池11、埼3,島10、門1,水門1。読み添えはかなり多いが(注釈書によって出入りがある)、岡、池、島の多さがきわだつ。岡はもともと「の」がつきにくく、池は古事記独特で灌漑用の池の造成が多かったからということであり、島は国生みの神話で大量に出たということからで、池も島もなぜか「の」を読み添えするのは万葉でも同じだった。
「~」
香山、御諸山、喪山、竈山、畝火山、博多山、美和山、那良山、倉椅山、高安山葛城山、久士布流多氣、藍見河、吉野河、狹井河、伊邪河、和※[言+可]羅河、鵜河、伊豆志河、夜麻志呂賀波、兎寸河、美和河、飛鳥河、眞名子谷、阿具奴摩、比良坂、伊賦夜坂、馬坂、幣羅坂、丸邇坂、杖衝坂、波邇賦坂、阿波岐原、耳原、呉原、高佐士野、御立野、宇遲野、葛野、多遲日野、毛受野、蚊屋野、阿岐豆野、淤能碁呂嶋、淡嶋、津嶋、大倭豐秋津嶋、小豆島、大嶋、女嶋、伊知遲志麻、美志麻、淡道嶋、阿波志摩、佐氣都志摩、※[言+可]夫羅前、楯津、蓼津、久佐迦延
山11,たけ1,川11,谷1,沼1,坂7,原3、野8、島12、埼1、津2、江1。山は「の」のないのが多い。川も圧倒的に「の」の無いのが多い。坂が多いのはちょっと珍しい(つくのがない)。原や野もつかないのが多い(というかつくのがない)。島は、つくのとつかないのと拮抗。つかないのはだいたい短い名前のが多いが、長いのもあり、決定的ではない。万葉に多かった、浦は、つくのもつかないのも出てこず、埼も少ない。島はいったように国生み神話のために多かった。ということで、万葉のような海の旅が古事記にはほとんどないからだろう。「の」の有無については特に傾向というほどではないが、山と川で、「の」のつくのが非常に少ないとは言えよう。山11:3、川11:1。万葉ではこんな事はなかった。和歌はやはり「の」がつきやすいのだろう。音数の関係とか優美さの表現とかがかかわり、古事記は散文的で「の」が不要だということもあろう。